給食施設のためのHACCP

細菌

食の安全は、私たちが日常的に接する大切なテーマです。
特に給食施設や学校、病院などでは、HACCPの衛生管理が重要となります。
しかし、具体的な適用方法や厚生労働省の関連手引きについて知らない方も多いでしょう。
この記事では、食品衛生の専門家がHACCPの導入・運用のポイントを明確に解説します。

HACCPとは

食品の安全を確保するための一連の手順として、HACCPは国際的に認知されています。特定の危険因子を特定し、それをコントロールするための特定のポイントを管理することにより、食品の安全性を高めることを目指しています。
HACCPは、原材料の取得から最終的な消費まで、食品製造のあらゆる段階でのリスクを評価・管理する方法論で、これにより食品の安全が確保されます。

HACCPの基本的な考え方 

HACCPの考え方は「予防主義」に基づいています
具体的には、食品の製造・加工・流通の過程で起こり得る危険や問題点を事前に予測し、それを予防または低減するための手段を講じることを意味しています。このシステムは、危険因子を特定し、それらの因子が安全な範囲内に保たれるようにするための臨界点を特定します。
そして、これらの臨界点を定期的に監視し、適切な措置を取ることで、食品の安全性を維持しようとするのがHACCPの基本的な考え方です。

給食施設でのHACCP

集団給食施設における衛生管理は、食中毒予防のために不可欠です。これまで、給食施設では細菌性食中毒の予防を目的として、調理工程の洗浄、消毒、加熱管理、調理従事者の健康診断、検便、手洗い、服装の点検、施設設備の作業区分、防鼠、防虫、機器の洗浄消毒や、関係者に対する衛生教育も行われています。しかし、給食施設を原因とする食中毒は減少しておらず、調理の過程を総合的に捉えた衛生管理体制が不十分であったことが大きな要因と考えられます。
そのため、食中毒のリスク管理を行うためには、HACCPを取り入れた衛生管理が必要となります。これにより、給食施設における食中毒のリスクを効果的に管理し、食品の安全性を高めることができるのです。

給食施設での衛生管理計画  

給食施設における衛生管理計画は、食材の選定から配膳までの各工程での安全管理を重視しています。
HACCPの考え方を取り入れることで、具体的な危険因子やその管理点を明確にし、日常的な運用を確実にすることができます。継続的な監視と評価を行い、必要に応じて計画の見直しも行われるので、安全な給食提供が期待できます。

大量調理マニュアルとの関連  

給食施設での大量調理は、多くの食材を一度に扱うため、リスクも増大します。
大量調理マニュアルは、そのリスクを低減するための指南書となっており、HACCPと組み合わせることで、更なる食品安全の確保が期待できます。
具体的な調理手順や温度管理など、詳細な指示がマニュアルには記載されており、それを基にHACCPの原則を適用することで、衛生的な調理が実現されます。

本マニュアルは、集団給食施設等における食中毒を予防するために、HACCPの概念
に基づき、調理過程における重要管理事項として、
① 原材料受入れ及び下処理段階における管理を徹底すること。
② 加熱調理食品については、中心部まで十分加熱し、食中毒菌等(ウイルスを含む。
以下同じ。)を死滅させること。
③ 加熱調理後の食品及び非加熱調理食品の二次汚染防止を徹底すること。
④ 食中毒菌が付着した場合に菌の増殖を防ぐため、原材料及び調理後の食品の温度管
理を徹底すること。
等を示したものである。

大量調理施設衛生管理マニュアル|厚生労働省

厚生労働省の手引書と給食施設  

厚生労働省は、給食施設におけるHACCPの適用を促進するための手引書を提供しています。
この手引書には、給食施設特有の問題点やその対策、HACCPの具体的な導入方法などが詳しく記載されており、施設での導入・運用の際の大きなサポートとなります。導入を考えている給食施設は、この手引書を参考にしながら、自施設に合ったHACCPのシステムを構築することが推奨されます。

委託給食事業者とHACCP

委託給食事業者とは、学校や病院、企業などから給食提供の業務を委託される事業者のことを指します。これらの事業者は大量の食事を提供するため、食品安全管理は特に重要です。
HACCPは、委託給食事業者における食品衛生管理を効果的に実施するための枠組みとして、その価値が認識されています。

委託給食事業者の手引書

厚生労働省や関連団体から提供される手引書は、委託給食事業者の食品安全管理の指針となっています。この手引書にはHACCPの考え方を基にした具体的な実施方法や管理のポイントが記載されており、事業者が食品衛生管理を適切に実施するための大きなサポートとなります。
また、具体的な危険因子の特定やその対策、そして継続的な改善の方法なども詳しく解説されています。

まとめ


給食施設におけるHACCPの導入と運用は、従業員全員の徹底した参加と理解によって初めてその真の効果を発揮します。このため、衛生管理のマニュアルを全従業員に徹底して周知し、すべてのスタッフが適切な衛生管理を行えるようにすることが重要です。また、食の安全には万全な方法というものは存在せず、食材、施設の環境や設備、調理する人間など、多くの要素が食中毒のリスクを持っています。そのため、HACCPに基づいた衛生管理方法を適切に機能させることが必要であり、常に食の安全に対する注意を怠らないことが求められます。給食施設においては、HACCPの原則を日々の業務に組み込み、食品の安全性を継続的に確保することが、食中毒の予防と食品安全の確保に不可欠です。

よくある質問

HACCPの導入や運用に関して、様々な施設や状況で疑問や不明点が生じることは自然なことです。
ここでは、多くの方々から寄せられる質問とそれに対する答えを専門家の視点から解説いたします。

Q
HACCPの導入は給食施設で義務化されているのか?
A

給食施設におけるHACCPの導入は、食品安全の向上を図るための重要な取り組みとして推奨されています。しかし、全ての施設での義務化ではありません。それでも、多くの地域や施設での導入が進められており、その背景には利用者の安全を守るという強い思いがあります。

Q
学校や保育園でHACCPの導入はどのように行われるのか?
A

学校や保育園では、子供たちの健康を守るため、食品衛生管理が重要となります。HACCPの導入に際しては、まず各工程での危険因子の特定を行い、それに対する監視体制を構築します。また、導入に当たっては、厚生労働省の手引きを参考にしながら、施設の実情に合わせた計画を立てます。

Q
病院でのHACCP適用の特徴は?
A

病院での給食は、患者さんの健康状態に応じて様々なメニューが用意されます。
そのため、HACCPの適用に際しては、特定の食材に対するアレルギーや疾患に対応した食事提供が求められる点が特徴的です。

Q
厚生労働省のHACCP関連手引書はどこで入手できるのか?
A

厚生労働省の公式ウェブサイトから、HACCPに関連する手引書やガイドラインを無料でダウンロードすることができます。
これらの資料は、HACCP導入の際の大変役立つリソースとなります。

Q
HACCPの基本的な考え方とは?
A

HACCPは、食品製造の各工程で発生しうる危険因子を事前に特定し、それを管理することを目的とした食品安全管理のシステムです。特定された危険因子に対して監視を行い、常に安全な食品製造を維持することを目指しています。

Q
委託給食事業者はどのようにHACCPを適用すればよいのか?
A

委託給食事業者は、大量の食事を提供することから、厳格な食品安全管理が求められます。HACCPの適用に際しては、事業者独自の危険因子を特定し、それに対する適切な管理手段を導入する必要があります。厚生労働省の手引きや関連する情報を参考にしながら、適切な計画を策定し実践することが大切です。


給食施設における食中毒事故のリスクを正確に理解し、把握することは、安全な食品提供のために不可欠です。そのためには、徹底した衛生管理計画の策定と実施が必要です。食中毒事故を未然に防ぐために、衛生管理のプロトコルを確立し、全従業員がこれを厳格に遵守することで、給食施設は食品の安全性を保ち、信頼を維持することができます。

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