この記事では、食中毒の原因菌でもあるサルモネラ菌の基本情報から感染予防まで、食品細菌検査の専門家が詳しく解説します。
サルモネラ菌の概要
サルモネラ菌とは、私たちの身の回りに存在し、特に食品を通じて人間に感染する可能性がある細菌の一種です。この細菌は、食中毒の原因となることで知られています。
ちなみに、サルモネラ菌を原因とする食中毒は全体の約2%程度です。

サルモネラ菌とは何か
サルモネラ菌は、細菌の一種で、特に生肉や生卵などの食品に存在します。
この細菌は、食品が十分に加熱調理されない場合や、調理後に適切に保存されない場合に、人間がこれらの食品を摂取することで感染します。感染すると、腹痛や下痢、発熱などの症状を引き起こします。
サルモネラ菌の特徴
サルモネラ菌は、その形状から「桿菌」と呼ばれるグループに分類されます。また、この細菌は「グラム陰性菌」に分類され、特殊な染色法であるグラム染色によって細胞壁の構造を確認することができます。さらに、サルモネラ菌は「運動性」を持つという特徴があり、繊毛と呼ばれる構造を使って動くことができます。この運動性により、細菌は環境中を移動し、生存に適した場所を見つけることができます。
サルモネラ菌の種類とその特性
サルモネラ菌は、その種類が非常に多く、その中には人間に感染症を引き起こすものも含まれています。それぞれの種類には、異なる特性と症状があります。
主要なサルモネラ菌の種類

サルモネラ菌は、2500以上の血清型が存在するとされています。
その中でも、人間に感染症を引き起こす主要な種類としては、「サルモネラ・エンテリティディス」や「サルモネラ・チフィムリウム」があります。これらは、食品を通じて人間に感染し、食中毒を引き起こすことが知られています。
2005年1月に裁定された分類ではサルモネラは以下のように分類されています。
- Salmonella enterica
- subsp. enterica
- serovar Choleraesuis ブタコレラ菌
- serovar Typhi チフス菌
- serovar Paratyphi A パラチフス菌
- serovar Paratyphi B
- serovar Paratyphi C
- serovar Typhimurium ネズミチフス菌
- serovar Enteritidis 腸炎菌
- supsp. salamae
- supsp. arizonae
- supsp. diarizonae
- supsp. houtenae
- supsp. indica
- subsp. enterica
- Salmonella bongori
各種類の特性と症状
「サルモネラ・エンテリティディス」は、特に鶏卵に多く存在し、調理が不十分な場合に感染します。感染すると、腹痛や下痢、発熱などの症状が現れます。「サルモネラ・チフィムリウム」は、家禽や牛などの動物に存在し、これらの肉類を通じて感染します。感染すると、腹痛や発熱、頭痛などの症状が現れ、重症化すると腸炎を引き起こすことがあります。これらのサルモネラ菌は、適切な調理と保存により感染リスクを大幅に減らすことができます。
サルモネラ菌による感染症(サルモネラ症/サルモネラ食中毒)
サルモネラ菌による感染症、すなわちサルモネラ症は、食中毒の一種で、特に食品を通じて感染します。その症状と経過、診断と治療について詳しく見ていきましょう。
サルモネラ症の症状と経過
サルモネラ症の症状は、感染後12~72時間で現れ、主に腹痛、下痢、発熱などです。これらの症状は通常、感染から4~7日で自然に改善しますが、重症化すると脱水症状を引き起こすことがあります。特に幼児や高齢者、免疫力が低下している人は重症化しやすいとされています。
サルモネラ症の診断と治療
サルモネラ症の診断は、主に症状と患者の食事歴に基づきます。
確定診断は、便や血液の培養によりサルモネラ菌を検出することで行われます。
治療については、軽症の場合は自宅での安静と水分補給で改善することが多いです。しかし、重症化した場合や高齢者、免疫力が低下している人は、抗生物質を用いた治療が必要となることがあります。また、脱水症状がある場合は、点滴による水分補給が必要となることもあります。
サルモネラ菌の感染源と感染経路
サルモネラ菌は、特定の食品や環境に多く存在し、これらを通じて人間に感染します。具体的な感染源と感染経路について詳しく見ていきましょう。
サルモネラ菌が多く見られる食品や環境
サルモネラ菌は、特に生肉や生卵、生乳などの食品に存在します。また、家禽や牛などの動物の腸内にも存在し、これらの動物の肉や卵を通じて人間に感染します。さらに、サルモネラ菌は、食品の製造過程や調理過程で、器具や手などから食品に移ることもあります。
サルモネラ菌の感染経路
サルモネラ菌の主な感染経路は、感染した食品を摂取することです。特に、生肉や生卵、生乳などが十分に加熱調理されない場合や、調理後に適切に保存されない場合に感染リスクが高まります。また、感染した動物との直接的な接触や、感染した人との接触による二次感染も考えられます。これらの感染経路を理解し、適切な予防策を講じることが、サルモネラ症の予防には重要です。
サルモネラ菌感染予防のための対策
サルモネラ菌の感染を防ぐためには、食品の取り扱いと調理方法、個人的な衛生習慣の両方に注意を払うことが重要です。
食品の取り扱いと調理方法
サルモネラ菌は熱に弱いため、食品を十分に加熱調理することで感染リスクを大幅に減らすことができます。特に、生肉や生卵などは中心までしっかりと加熱することが重要です。また、調理後はすぐに冷蔵庫で冷やすなど、適切な保存方法を心掛けましょう。さらに、生の食品と調理済みの食品は別々の器具で扱うなど、交差汚染を防ぐ対策も必要です。
個人的な衛生習慣
個人的な衛生習慣も感染予防には欠かせません。手洗いは最も基本的且つ効果的な予防策で、特に食事前や調理前、トイレ後には必ず行いましょう。また、感染した人との接触や、感染した動物との接触を避けることも重要です。これらの対策を日常的に行うことで、サルモネラ菌による感染症を予防することができます。
サルモネラ菌に関する誤解と真実
サルモネラ菌については、多くの誤解が存在します。ここでは、その誤解と真実、そして専門家のアドバイスについて説明します。
全てのサルモネラ菌が人間に感染症を引き起こす?
サルモネラ菌についての一般的な誤解の一つは「全てのサルモネラ菌が人間に感染症を引き起こす」というものです。しかし、実際には2500以上の血清型が存在し、その中で人間に感染症を引き起こすものは一部に限られます。また「サルモネラ菌は熱に強い」という誤解もありますが、実際にはサルモネラ菌は熱に弱く、適切な加熱調理により死滅します。
サルモネラ菌に関する専門家のアドバイス
サルモネラ菌による感染を防ぐためには、食品の適切な取り扱いと調理、そして個人的な衛生習慣が重要です。特に、生肉や生卵などは十分に加熱調理し、調理後はすぐに冷蔵庫で冷やすことが推奨されます。また、手洗いを常に心掛け、感染した人や動物との接触を避けることも大切です。これらの対策を日常的に行うことで、サルモネラ菌による感染症を予防することが可能です。
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