食品安全のキーポイント 微生物検査の実際とは？

食品の中には見えない敵、すなわち有害な微生物が潜んでいることがあります。それらをどのように特定し、私たちの食卓を守るのか。食品衛生管理の専門家が行う微生物検査の重要性と手法について、詳しく解説します。この記事を通じて、食品の安全性に対する新しい視点を得ることができます。

なぜ食品微生物検査が必要か

食品にはさまざまな微生物が存在します。これらの微生物の中には、私たちの健康に害をもたらすものもあります。そのため、食品の安全性を確保するためには、これらの微生物を検査し、適切に管理することが不可欠です。食品微生物検査は、食品が安全であることを確認し、消費者の健康を守るための重要なプロセスです。

微生物検査の基本的な手法とその進行

食品の微生物検査には、いくつかの方法がありますが、最も一般的なのは、培養法による検査です。
まず、サンプルを食品から取り出し特定の培地で培養します。数日後、増殖した微生物のコロニーを数えたり、特定の方法で特定の微生物を検出したりします。この結果をもとに、食品の安全性が確認されます。

食品の安全性を保つためには、食品衛生法で指定されている検査項目を確認するのが基本です。しかし、実際の食品製造では様々な食材を組み合わせて商品を作るため、法で定められた検査だけでは十分ではないこともあります。
食材や製造の過程で新しいリスクが生じる可能性があり、このリスクを正確にキャッチし、適切な対応をするためには、企業ごとに独自の自主検査を追加することが食品衛生法により規定されています。

例として、鶏肉を取り上げると、サルモネラやカンピロバクターといった病原菌のリスクが考えられます。食品衛生法では、サルモネラは検査の対象になっていますが、カンピロバクターは含まれていないのです。このようなケースでは、製品の安全を確保するために、カンピロバクターの検査も追加で行うことが大切です。

食品衛生に関する国、地方自治体、食品等事業者の責務を定めると共に（第2条）、食品等事業者による自主検査の実施及び危害の防止に必要な情報の記録保存に関する努力義務（第3条）を規定している。

食品衛生法｜内閣府ホームページ

食品微生物検査と食中毒

食品は私たちの生命を支えるものですが、不適切な管理や加工方法により、微生物の繁殖が進行することがあります。特に、食中毒を引き起こす可能性のある微生物の繁殖は、消費者の健康に深刻な影響をもたらす恐れがあります。そのため、食品を供給する前に、微生物検査を行い、食品の安全性を確認することは極めて重要です。

食中毒の原因微生物

食中毒の主な原因となる微生物には、サルモネラ、大腸菌O157、カンピロバクター、リステリアなどが挙げられます。これらの微生物は、感染源となる食品を摂取することで、人体に侵入し、様々な症状を引き起こします。症状の中には、腹痛や下痢、発熱など、深刻なものもあり、場合によっては命に関わることも考えられます。

食中毒の主な原因菌	原因・特徴
一般細菌数	これは食品の微生物による汚染の度合いを示すもので、この数値から食品が腐敗しているか、食中毒のリスクがあるかを判断できます。
大腸菌群・大腸菌群数	この菌は自然に多く存在します。加熱食品に見られる場合、十分に加熱されていないか、加熱後の取り扱いが適切でないことを示唆します。未加熱食品では、衛生的な意味合いは薄いものの、食品の保管や洗浄の方法の指標として役立ちます。
大腸菌	この菌が検出されると、食品が糞便で汚染されている可能性が高まります。主に生肉や生魚、生野菜などの未加熱食品に関連します。
黄色ブドウ球菌	この菌が検出されると、食品が糞便で汚染されている可能性が高まります。主に生肉や生魚、生野菜などの未加熱食品に関連します。
サルモネラ属菌	家畜やペットからの感染が考えられ、特に肉や加工品を食べることで食中毒になることがあります。
腸炎ビブリオ	主に海の生物やその加工品に見られる食中毒原因菌です。寿司や刺身等の非加熱の魚介類が主な原因です。熱に弱い菌ですが、焼き魚の加熱不足による感染も報告されています。
ウェルシュ菌	耐熱性があり、さまざまな食品に見られる菌で、食中毒の原因となることがあります。
セレウス菌	自然界に広く分布しており、熱に強いため、調理での加熱だけでは死滅しづらい特徴があります。
カンピロバクター	主に動物の腸内や糞便に存在し、汚染された水や食品を原因として食中毒が発生することがあります。
腸管出血性大腸菌O157	特定の大腸菌の一種で、毒素を産生します。牛や他の家畜、人の糞便に存在し、食中毒の原因となることが知られています。

検査を通じて予防できる食中毒とその他のリスク

食品の安全性を確保するために、日本の食品衛生法で微生物の基準が設けられていまが、この基準は、食品内の微生物（菌）の数を制限しており、この基準を超える商品を売ると法律に違反することになります。食品製造会社は、製品がこの微生物基準を守っているかどうかを確認するために、菌の検査を行う必要があります。
この検査は、食中毒の防止や、取引先や消費者団体が商品を店頭で抜き取り試験を行った際に法令違反とならないようにするためにも重要です。
法令違反が発覚すると、商品を回収したり、取引が停止されたりするリスクがあります。そのため食品製造会社は常に検査を行い、基準を守る努力が求められます。
食品微生物検査の結果に基づき、食品の加熱処理や保存方法など、適切な管理策を講じることで、食中毒の発生やさまざまなリスクを減少させることができます。食品事業者は、常に正確な検査を行い、安全な食品供給のための努力を怠らないことが求められます。

よくある質問

食品微生物検査は、私たちの日常の食事を安全にするための重要な手段となっています。消費者の健康を守るため、食品製造者や流通業者はこの検査を欠かさず行っています。以下は、食品微生物検査に関する一般的な質問とその答えをまとめたものです。